鶴岡で日本NPOセンター常務理事の山岡氏のお話を聞く機会があった。東北公益文科大学の連続講座の中の一つで、「これからのNPO経営」というタイトルだった。
初心者にも非常に解りやすい内容で、また理論倒れでは無い実践者でもあるため、成功も失敗も含めて、氏が現場で見てきたものや考えてきた事など、僭越ながら体験談には共感するものが非常に多く、また改めて勉強させて頂いた事もあれば、組織論など新鮮な知識も得る事が出来た。
ボキャブラリー不足な私としては、NPOについても何かと説明する時に困ったりしているのだが、なるほど解りやすい言葉と具体例。私もNPOについて話をする機会があれば、受け売りになるが次回から少し参考にさせてもらおうと思った。
講演後に挨拶がてら雑談の時間を得た。もう少し時間があれば、もっといくつかご教示頂きたかったのだが…。逆に他の参加者がどういう質問をするかに興味があったので、講演の中では発言しないでしまった。
私としても、ふと気にして考えている事の一つに、NPOの増加と活動の活発化による民業(民間企業)への圧迫という事がある。
山岡氏の話を聞いていて、地域的な差もあるかも知れないが、なんだか単に企業よりNPOの方が安く出来る、と少し周囲に誤解を与える様な内容があった気もしたので(耳が悪いせいで)、またふと考えさせられた。景気も回復傾向が見られるという話もあるが、首都圏の大企業ならいざ知らず、地方の中小企業は未だに苦しく、「俺たちも非営利運営だ」という冗談にならない切実な話を聞く。
例えば、1人暮らしのお年寄りが、病院に行くにも足が悪くままならないとして、そこに近所の方や、学生ボランティアなどがお手伝いに行き、車で病院までの送迎を行っているとすれば、本来的にタクシーやバスなど交通会社の仕事を奪うことであり、また例えば地域の中で、自治会やPTAなどの有志が、子ども達に対して、無料若しくは極端に低い対価で休日のパソコン教室を開催しているとなれば、既存のコンピュータースクールの仕事を奪う結果となる。
市場経済では成り立たない部分に対して、社会の需要の隙間を埋める仕事をNPOが担う、という話になっても、そのレベルが少し気になるところで、今時の殆どの企業も、本来的なサービス部分と後の仕事への投資的な部分に対する対価は得られていないのではないかと思うこともある。原価だけ回収して、何とか継続運営できるコストだけ確保して、本来的な収益(利潤)をあげないという部分で。分野的に、また価格的に企業もNPOも変わらない部分が少なからずある様な気がする。
山岡氏は弁当の販売を事例に例えられていた。例えば製造原価が500円のお弁当。一般企業は、場所に届ける為の料金や、弁当を作る人達の給料など、色々計上して800円でなら売れるとする。しかしある面の需要として、1食が800円では高いし、毎日は食べられないから600円にして欲しいという声がある時、どうしたら600円で提供できるか。
お年寄りの自宅まで届けるのは、それくらいは私が無料でやろう。食べる人が喜んでくれる為に作っているのだし、また困っている人を助ける為にやっているのだから、私はそんなに給料は要らない。ただ製造原価など実費だけ貰えれば、後の儲けは必要ない、とすれば価格は下げる事が出来る。しかし同じ弁当が800円と600円で、また同じ市場で売っているとしたら、あえて高いほうを選ぶ人は余り居ないだろう。その場合、高い金額でしか売れない方にはダメージだ。
もしくは、民間企業のNPOの圧迫?…でもないんだろうか。本来的にそんなに儲けにはならないが、それでも何とか1円でも利潤をあげたいとなれば、まだやれる仕事はあるんだろうし。
確かに、そもそも企業とNPOでは組織の目指すものが違うからという話もあるが、お互い組織を成り立たたせて継続運営していく上で、収益を上げるという具体的な部分で、競合するところが生じてしまうとすれば、少なからず問題にはなるだろう。
確かに民間企業と競争するほどの組織力も資金力もNPOには無いし、逆に大きく気にする必要も無いのかも知れないが、でもやっぱりボランティアの方々があちこちで、無料でパソコン教室を開催すれば、それで生計を立てているパソコンスクールの先生方はたまったものではない。
多分、こんなくらいの事は、殆どのNPO関係者は解っているんだろうけど、理屈や理論と実態と、またNPOの役割という部分に絡んでも来るのだが、担うべきものとは何かも含めて、無知無学ながらにまた少し複雑に考えてしまう。あーでもない、こーでもない、と。
…というまに午前3時だもんなぁ。
日本NPOセンター常務理事の山岡氏
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2003年12月4日
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