参った。既に日曜日の午前2時。バイオ特区に絡む市民学習農園の開設事業について、12月下旬から1月中旬まで、JAと市との3者の間で、第2回目までの打合せが終わっている。ネットを中心に、特区については勿論、全国での色々なケースや申請内容、また一般の企画やアイディア面等についても情報収集している。特別農地貸付法の規制を緩和し、貸付可能な対象を行政や農業組合等以外に、一般企業やNPO法人に拡大し、空き地や耕作放棄地などの利用を促進しようとの試みは、全国でも20箇所くらいが申請をしているようだ。
市の構造改革特区の担当課は企画調整課だが、実務としては農政課・農業委員会が動く。1月中旬の第2回目の打合せから、農政課の担当の方も交えての話になった。役割分担としては、JAが農家の取りまとめや、土地の斡旋を行う事、農政課および農業委員会が協定や契約など、法的な部分の整備を担う。契約主体がグラウンドワーク庄内となる予定だ。
グラウンドワーク庄内では現在のところ、事業計画書の作成や、スケジュール、ビジネスモデルなどを検討している。加藤清輝理事と、石川敬義理事のほか、金子博理事もサポートに回るなど、こちらとしては今までの事業以上に、市の構造改革特区申請の流れを支援するため、最大限真剣に取り組む体制だ。が、市側の4月運用開始案に合わせて、時間は残り少ない。
そういった中、心配した石川敬義理事が、先日、直接市の担当と話をして来た様だ。これまでも加藤清輝理事が中心に話を進めていた。が、その当初の話ともまた少し食い違っているらしい。
グラウンドワーク庄内としては、内部的に、今年度「遊休農地活用モデルプロジェクト」として総会に上程し、もちろん理事会の中でも承認されている。最近の理事会もしくは理事懇談会の中でも、何度か話題になってはいる。
ただ具体的に話が見えてくるに連れて、今回の農園開設の件については、アドバイザーも含め、内部で慎重対応を進める意見が多くなってきた。当初は、申請書にも具体的にあるとおり、エコリングというNPO法人が担当し、実際には昨年6月に開設して動いているはずだった。それが諸事情で動きが取れ無かった。そういった部分でも急いでいる理由があるのかも知れないが、そこにグラウンドワーク庄内案が出て来た。
市サイドとしては、今年4月から開設するとして、その準備のための土地の賃借料・整備費、チラシといった広告費なども全て込みの補助金として、30~50万円をつけるとの意向だった。普通に聞いても、そのくらいの金額でやれというのは無謀な事の様に見えてしまうだろう。確かに市側から「やりようはあるだろう」と繰り返されれば、その通りなのかも知れないが、同じ市職員や会員の方に相談してみても、まずは第一声、鼻で笑われてしまう。例えば土地の整備費だけみても、本来的には数十万から100万円は実費として必要になる。仮にグラウンドワーク庄内の人件費や労力分を無視したとしても、桁が一つ以上違うんじゃないか、というのが一般的な見方になる。別にトイレを作れとか休憩所を整備したほうが良いとは思わないが、せめて畑として使うための土地整備に、もっと初期投資は必要なんじゃないかなとは感じる。
市側としては、あくまでグラウンドワーク庄内が実施主体となるもので、市はそれを支援する役割。業務委託ではないとの見解で、今年度は事業の立ち上げに対して補助はするが、来年度以降は自立運営して欲しいとの事。果たしてグラウンドワーク庄内のキャパシティとして、そこまで受けられるものだろうか。事業の実施と成果にそこまで責任が取れるのか。悪く見れば、市側がそれほどやる気が無いのであれば、こちらだけが当初からリスクを背負うのもどうかと思う、それはJAだってそう思うだろう、という意見も出てくる。
これまでも全国的に行われている市民農園の開設事業は、農地活用というより、あくまで空き地対策等であり、有名なドイツのクラインガルデン等とはもとから精神的な部分とか、発想が違う。比較してやや貧困な内容として評価される傾向がある。それらとどう区別をつけるのか。
当初からの狙いとしては、イベントや指導を通した市民と農家との交流促進と、市民のバイオ技術に対する理解の獲得、さらに慶応義塾などが行っているバイオ技術に対する地域市民の支援態勢作り、また作物の収穫と合わせた形での知識の収穫、山形大学(農学部)や、グリーンツーリズムなどとの連携が挙げられる。
グラウンドワーク手法で、NPO法人でそのような事業を実施するのは全国で初めてとなる。逆にここで変な事になれば、グラウンドワーク庄内のみならず、その自治体や関係者も全国で笑いものになりかねない。地元で意識する以上に注目されているところだ。
今日も午後3時ちょっと前、県庁の方がプライベートで遊びに来て、1時間半ほど、やはりその話になった。週末に良く来られて、インスタントコーヒーやお菓子等を差し入れしてくれる。
グラウンドワーク庄内の立場として危うい要素が多すぎる。余りにも準備期間が無い事、この段階で企画内容もやや未完成な事、整備予算が少なすぎる事、実施体制がまだ不安定な事、現状のそういった実施環境を考慮すると、グラウンドワーク庄内としては、必ずしも市側の意向通りに「細かい事はいいので取りあえず始めて下さい」的に実施するのは危うい面がある。もう半年ないし1年くらいは、きちんとした態勢作りや関係者との意思疎通、下地の準備などの観点からしても、少し慎重に進めるべきだ、との理由。
もしくは逆にグラウンドワーク庄内の人的ネットワークなどから、別にそういった環境が整っている場所があればそちらで始めたほうが良い。とある財団からの大口の助成金があるとか、もっと環境が整うまで待つしかないかも知れない。とか、
今回は、「石塚さん個人の企画調整課の元同僚の人達に対する…そういった部分は解らなくも無いが、この段階で下手をすれば、グラウンドワークも評判が悪くなる様な事があってもまずい。市の思惑はそれとして、端から見ても、グラウンドワーク庄内はそこまでリスクを背負う必要は無い。もっと環境が整っていれば別だが。けしかける人が居るとして、言うほど上手くはいかない。JA側もきっとそう思ってるだろう。」との話を頂いた。そうかも知れない。
かたや既存の市民農園は、今後も継続して市サイドの助成のもと実施し、1区画を年間4000円の会費で貸し出している。年に2回の研修があるものの、特に日頃農家の指導を受ける事も無いようで、また市内各所に点在しているので、おおよそ空き地対策だろうと思われる。
そこに民間で新たに市民農園を開設し、こちらは年間2万円(当初案)で貸し出すとする。ただし農家やJAの指導員から、電話相談や現場指導が受けられる、山大の先生方から勉強会も開催してもらえる、収穫時には収穫祭などで交流を深められる、バイオ技術について理解も得られる、などなど。民間独自にやる分値段は高くなるが、そういった得点が付いてくる。…という話か。
はぁ、難しい。がここまで来ると、私がとやかく言う事でも無い。大きな方針としては、賢明な理事会メンバーやアドバイザー集団が中心に、検討するだろう。無理なようなら、今回の事業への参画は中止せざるを得ないのか。私はこの際、技術的な調整役とか連絡役に徹したほうが良いかも知れない。今回に限っても、会議などで前面に出るべきではない。
企画立案や、協力体制とか、人的ネットワークについては余り心配してなかったが……。仮に始めるとして、どういった環境で始められるか。資金的な課題とか予算的なリスクより、よほど難しい問題が見えるような気がする。
JAにも鶴岡市にも迷惑は掛けられないのは勿論、NPOの信用にもなる。
バイオ特区 ・ http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/sankou/030425/5.pdf