今月の「わいわいがやがや会」


ネットコミセンで開かれた今月の「わいわいがやがや会」では、鶴岡アートフォーラムの話題を中心にして頂いた。
「本当に一般市民を対象にサービス考えているなら、…したほうが良いのではないか。」「オープニングでは…した方が良い。」「…という使い方は出来ないのか?」など、色んな提案や意見、期待も寄せていただいた。ちょっとまとめて、朝の会議ででも提案してみようと思う。

その後、企画調整課の先輩方と飲みに行った。
あちこち表に出さないにしても、最近また1人で色々と頭を抱えてしまっていた。周りでは不気味だったかも知れないが「う~ん…。」「あぁ…どうすっかな…。」という類の台詞は、独り言として、無意識にも声で発していたかも知れない(苦笑)。
アートフォーラムや庄内NPOセンターの中だけでも、何かと考えなければならない事、判断が求められている事が多く、また色んな人からの意見や思惑も上手くまとめきれず、どうも私自身が思考の軸を失って、フラフラしていたようだ。
その事を、先輩方から気付いてもらい、遠まわしながら教示して頂いた。

何があっても、本来、原則、そういった軸を失わない事…。肝心のそれを忘れていた。まずは物事の根っこを押さえて、簡単に動じない姿勢が大事だ。
何にせよ、その物事は本来的に何を基調として、どこによって立つものがあるのか、当初の理念は何か、何が期待されたのか。
当初、道筋や方向性が全て整備された上で、確固たるものがあって今がある。庄内NPOセンターだってそうだ。何も積み重ねも前触れも無く、一時の気紛れや思い付きで、いきなりボンと出来たものでは無い。
それすら自覚できず、枝葉の問題に振り回されて、今更、私は何を1人で勝手に考え直そうとしてたのか。正直、思考回路がバランスを欠いていたのだろう。危ない、危ない(苦笑)。

土曜日の午後は、東北公益文科大学の大学院の中谷先生から、短時間ながら「ケースメソッド」についての講義を受ける事が出来た。
ケースメソッドとは、当初ハーバード大学で始まり、今はアメリカのビジネス・スクール等でも普通に行われている企業倫理や経営倫理、実践的な経営教育のための学問で、主に従業員のモチベーションや倫理感の維持に有効な研修ツールらしい。

例えば、経営者というものは基本的に現場には居ない。だから、部下の情報やペーパー資料など、現場から上がってくる情報をもとに経営判断を行う必要がある。しかしその情報にも、何かしらの誘導や操作が加えられていたり、誤りがある場合がある。
そうすると、その情報を基にした判断で経営を誤るという事が、時に大きい問題になりかねない。本当にこの経営判断は正しいのか、そういうジレンマを解消したい、というところから生まれた学問だそうだ。
ワークショップが狙うところのそれぞれの自己満足や、色んな答えが出てよかったね、というものではなく、組織としての結論を出し、何が正しいかの判断をするのが目的の作業という事だった。


最初に中谷先生から、NPOについて質問があった。
企業・行政には、10年後、20年後、100年後と、長期的なビジョンがある。しかしNPOにはその長期的な構想はあるのか?長い事業展開を考えているのか?私が知る限りの、ビジョンも活動も、半年、1年といったスパンでコロコロ変わるような団体に、果たして経営責任が取れるのか?責任と言うものが当てはまるのか?ケースメソッドという手法が適しているのか?と。
その組織の事業目的やビジョン、もしくは体制、活動内容が短期間で変わるという事は、経営倫理も変わるという事で、合意形成の仕方や、経営施策の判断も、もしかすると一貫できないのでは無いか。
アメリカのNPOの7割は課題解決型で、3年以内に解散する。当初の目的(何かしらの課題解決)を達成すれば、おおよそ7割の組織はそれで解散するという話を聞いた事がある。
確かに、周りを見ても、それが何という事もなく、おおよその発想が単発でイベントを行う事ばかりの組織はある。

何を基本で原則として押さえるか。それは組織次第だろうが、本来は定款であり、設立趣旨であると思う。例えば組織の趣旨や方向性から、合意形成の仕方など。勿論、法に触れるとかギリギリの話では無いが、倫理や組織決定の判断、価値基準をどこに置くか。そしてそれは外にも示すのが今は一般的になってきている。
別に、一度決めたら変えられない、という事でも無いが、例え方針を変えるにしても、その過程や判断基準の明確さが欲しいと言う事だ。

とある自動車会社は、自社が製造・販売した自動車の欠陥に気付きながらも、その欠陥を元に事故が起き、賠償をすることになる可能性とその賠償金額と、既に販売してしまった自動車の欠陥を修理するのに掛かる部品代や労力などの経費を測りにかけた結果、欠陥の修理をしない事を決断した。製造・販売利益を優先した結果の判断である。
しかし結局はそのことが表に出て、信頼とイメージを損ない、損害賠償以上に失ったものが大きかった。
一面正しいが、一面誤っている。経営リスクは常につきまとう中で、その時、何を優先して判断するか。普段、その組織はどういう基準で、どういう過程で経営判断をする組織なのか。
何をその組織の最大の満足とするか。例えば会員に対してのサービス提供を重視するか、地域に対するサービスを重視するか、はたまた職員や理事個人の満足度を重視するか。利益を重視するのか、公益性を重視するのか、安全性を重視するのか、速度を重視するのか、正確さを重視するのか。色々と問われる事は沢山ありそうだ。
合意を得ているようで、実は合意は得られていないのではないか、合意を得る手法を誤ってないか、もしかすると思い込みのままで進めてないか、など。話を聞いていると、自分も改めて考える点が多々あることを思い直すきっかけにもなった。

NPOの人間は「私は良い事をしてるんだから」と独善に走る場合が多く、自分は間違って無いと確信して、疑わない事が多い。幾度と無く「うちのNPOが上手く行かないのは、理解の無い市民が悪い、行政が悪い、付いて来れないスタッフが悪い」という人には出会ってきた。まして信念を持ってNPO活動に取り組んでいる方の場合は、余計に自分自身の事を省みるのが難しい。

しかし、時に自分自身すら疑い、全体を考え直してみる作業。周囲を見渡してみる作業。根本を問い直し、軸を確認する作業。
仮にも組織の経営者である事を自覚すれば、時には、これもまた大事なことだ。特に主だった関係者の中では、定期的に必要な作業になるのだろうか…。
そういう気付きや学びが多い週末だった。

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